2026/08/17
2026年8月の発達障がいグループワーク
2026年8月1日、クリニック奥の多目的室にて、月例の発達障がいグループワークが開催されました。
今回は女性5名、男性2名の方にご参加いただきました。
今回のグループワークは、講義中からたくさんの質問が寄せられ、予定していたグループワークの時間が取れないほど、活発な会となりました。
今月のテーマ
「発達障がいが見逃されやすい精神障害」
発達障がいと、その他の精神障害との違いや関係について、これまでの精神医学の変化にも触れながら学ぶ時間となりました。
前半 理事長によるミニ講義
講義ではまず、これまで精神科領域でどのように病気が分類され、診断されてきたのかについてのお話から始まりました。
40年ほど前には、精神疾患を「内因」「外因」「心因」といった大きな枠組みで捉える考え方がありました。
当時は、現在のように発達障がいについての理解が十分に進んでいなかったため、自閉症やADHDなどについても、現在とは異なる捉え方がされていたことが説明されました。
その後、診断基準が整備され、研究が進むにつれて、発達障がいについての理解も少しずつ変化してきました。
かつて「自閉症」「アスペルガー症候群」と分けて考えられていたものが、現在ではASD(自閉スペクトラム症)として捉えられています。
また、以前はMBD(微小脳機能障害)などと呼ばれていたものが、現在のADHD(注意欠如・多動症)につながっていくなど、時代とともに診断の考え方も変化してきました。

現在では、ASD、LD、ADHDなどの特性がそれぞれ独立しているとは限らず、いくつかの特性が重なっていることも少なくありません。
一方で、発達障がいへの理解が十分でないまま、別の精神障害として診断されてしまう可能性があることも、今回の講義で取り上げられました。
発達障がいの特性を理解していないと、その上に現れている他の症状が見えにくくなってしまうことがあります。
理事長からは、ひとつの診断だけに目を向けるのではなく、その人全体を広く見ながら診断することの大切さが伝えられました。
そのイメージを「グラスの中の氷」にたとえ、見る角度によって見える部分が違ってくるというお話もありました。
発達障がいと、ほかの精神障害との違い
講義では、気分障害や統合失調症、人格障害などとの違いについても説明がありました。
たとえば、気分障害では気分の波が一定の期間をもって現れることがありますが、発達障がいでは、一日の中でも状態が変化することがあります。
また、発達障がいの特性によって対人関係がうまくいかず、その結果として人格障害と診断されるケースもあることが紹介されました。

「できないことが多い」ということを繰り返し叱責されることで、二次的にうつ状態になることもあります。
こうしたことからも、目の前に現れている症状だけを見るのではなく、その背景にある特性やこれまでの経過を含めて考えることが大切だということが伝えられました。
また、発達障がいについては「治す」というよりも、生活上の困りごとを減らし、その人らしく生活できる状態を目指していくという、現在の医療の考え方についてもお話がありました。
活発な質疑応答
今回、特に印象的だったのは、講義中から質問が途切れなかったことです。
「以前の精神分裂病と、現在の統合失調症は同じものですか?」
「統合失調症とASDでは、どのような違いがありますか?」
「発達障がいの診断基準は世界共通なのでしょうか?」
「発達障がいは治るのでしょうか?」
「人格障害は治りますか?」
など、参加者の皆さんからさまざまな質問が寄せられました。
精神分裂病と統合失調症については、病気そのものは同じですが、病名が変更されたことで社会の受け止め方にも変化があったことが説明されました。
また、発達障がいの診断基準は国際的に共通する部分がある一方、それぞれの文化によって、人とのコミュニケーションのあり方や「普通」とされる基準が異なることについてもお話がありました。
自閉症の知覚過敏や、過去の記憶が薄れにくいこと、思春期に特性が目立ちやすくなることなどについても質問が続きました。

一つひとつの質問に理事長が答える形で話が広がり、質疑応答はなんと1時間ほど続きました。
後半 グループワーク
この日は、予定していたグループワークの時間がなくなるほど質問が続いたため、通常の形でのグループワークは行われませんでした。
会が終わった後も質問や相談が続き、参加者の皆さんの関心の高さがうかがえました。
また、以前のグループワークで紹介された「エンデバーライド」について、参加者同士で情報交換をする姿も見られました。
講義を聞くだけではなく、それぞれが知っている情報や経験を持ち寄ることで、自然な交流が生まれていました。
これからも変わっていく精神医療
今回の講義では、昔と今とでは精神医学における診断や治療の考え方が大きく変化してきたことも学びました。
精神科を受診することへの偏見が少しずつ減り、以前よりも相談しやすくなってきたことも、その一つです。
そして、これから20年、30年先には、発達障がいについての考え方も、さらに変わっているかもしれません。
「今わかっていること」だけにとらわれず、その人の特性や困りごとを広い視野で見ていくこと。
今回のグループワークは、そんなことを考える機会にもなりました。
次回のテーマ
次回は、
「ASDの治療について
~薬物療法と非薬物療法~」
をテーマに開催する予定です。
皆さまのご参加を、心よりお待ちしております。