インタビュー

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患者さまのために何ができるだろうと考えていたら、診察室を出てグループワークや一緒に音楽をしていました。

診療だけの治療に限界を感じ、グループワークを始めました。患者さまの生活のサポートをする精神保健福祉士などのコ・メディカルの方々やその機関と協力して、患者さまが少しでも良くなるように尽くしています。

医師を志し、心療内科と精神科を選んだ理由を教えてください。

会社員時代に過重労働により胃痛がひどくなり、体調を崩しました。ホームドクターから何か手に職が付けられる資格を取った方が良いと勧められ、もう一度大学を受験し、医学部に進学しました。当初皮膚科の医師を目指していましたが、精神科の先輩から仕事について話を伺い、直前で精神科に変更しました。

その時はなぜ精神科を選択したか自分でも分からなかったんですが、精神科の医師として発達障害の患者さまと接していくうち、自身も幼少期に同じような経験があることに気づきました。自分にも軽度の発達障害があったのです。今にして思えば、そのことがあって精神科に進んだのだと感じています。

医師になってからのやりがいや気づいたことはございますか?

医師としてのやりがいは、患者さまが良くなるために、一人ひとりと向き合ってオーダーメイドの治療ができることです。そして患者さまの改善が見られるたびにうれしくなります。30年ほど長く診ている患者さまも少しずつ良くなり、一緒に人生を生きている感じがします。

保健所の嘱託の仕事をしていた時に精神保健福祉士の方と出会い、病気だけではなく、生活のサポートや保健所などのさまざまな機関との連携が必要だと感じました。このことから、現在も嘱託医を引き続きやっています。コ・メディカルの方と意見を交わし、尊重し、皆で話し合って協力しながら患者さまを見守っています。

院外活動を行ったきっかけがありましたら教えてください。

以前から行っていた心理検査が口コミで広まり、患者さまが増えたことや診療をしていく中で、診察室だけの治療には限界があると感じていました。もちろん治療室だけで改善に向かう方もいますが、もう少し違う方法でよくすることはできないかと考えて、月に1回、グループワークを始めるようになりました。

趣味だった音楽を「患者さまと楽しもう」と思い、一緒に演奏をしたり、患者さまに頼まれて詩に曲を作ったりなどもしました。そのグループワークは当医院で受診している以外の方も参加可能です。そこで、自身の病気のことをもっと詳しく知りたいという声をいただいたので、年に1回疾病理解会を始めました。

診察の際に気を付けている、心掛けていることはありますか?

特に精神科では、患者さまと医師との信頼関係がなによりも大事だと思っています。ですから、基本的に患者さまが求めることしかしません。例えば、本当はこの薬を飲んだ方が良いと思っても、患者さまが飲みたくない場合は強制しません。そのかわりに月1回来院し、その間に起こった困ったことを相談していただきます。

投薬の際は薬の主作用と副作用をしっかり説明しています。心の病の治療では、薬や投薬より前に、医師と患者さまとの信頼関係という土台があってこそだと思っています。

今後の展望がございましたら教えてください。

この河内長野市の地域には高齢者の方が多くいらっしゃいます。この地域で開業している以上は、高齢者の方が住みやすい街を作っていかなければならないと感じています。また、発達障害の方は通常とは違う個性を持っています。特性はあるけれど、疾病ではないレベルまでになったら、社会も受け入れるべきだと思っています。

しかし、社会はそういった障害を持つ人に対して受け入れがいいとは言えません。そのため、発達障害の方が社会で生活しやすい環境を作っていきたいと思っています。そして、遠方からもご来院される方も多いので、各地域でこの病気のことを理解してくれる先生が増えるためにも、講演活動も活発に行うべきなのかなと考えています。